環境負荷を軽減するフードテック「デリバリープラットフォーム」スタートアップ紹介

環境負荷を軽減するフードテック「デリバリープラットフォーム」スタートアップ紹介
環境負荷を軽減するフードテック「デリバリープラットフォーム」スタートアップ紹介
環境負荷を軽減するフードテック「デリバリープラットフォーム」スタートアップ紹介

このシリーズでは、気候変動やガバナンスなどESG分野に取り組む技術・サービスを提供する国内外のスタートアップを紹介します。「ESGテーマ」といっても領域や内容はかなり幅広く多岐に渡るので、切り口として、領域・キーワード・用語毎に調査したスタートアップ概要をご紹介しながら、最終的にはESGスタートアップカオスマップを目指していきます。

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今回のテーマは、環境負荷を軽減するフードデリバリーサービスを提供するスタートアップです。

フードテックには大きく分けて2つのカテゴリーがあり、培養肉や植物性タンパク質など食材そのものをイノベーションする企業、そしてそれらの食材を家庭やレストランなどに提供するサービスをしている企業です。EmergenResearchのデータによると、フードテック全体の世界市場規模は2027年までに342Bilion USD(およそ50兆円)ほどに到達するとも言われています。

そんな中でも環境に負担の少ないフードテック技術が注目されており、最新の技術を使ってシステムや食品自体を改革していく動きが世界的に活発になってきています。その背景には食全体のシステムが環境汚染に深く関わっている点が挙げられます。

世界ではコロナ禍を経験し、食品のデリバリーサービスへの需要が拡大しています。特にアメリカの西海岸では環境負荷を減らしてサステナブルな食品を家庭に届けることに特化したサービスが増えています。これからの成長にも期待が高まっており、2027年度までにCAGR(年平均成長率)は6.8%の成長が見込まれています。

今回はその中でも海外のtoC向けのサステナブルな食を推進するデリバリーサービスを提供するスタートアップをご紹介します。食システムの環境負荷の多くを占めているのが家畜の飼育や輸送と言われており、環境に負荷の少ない農家や酪農家の食材を、環境に配慮した方法でデリバリーするスタートアップが注目を集めています。

Imperfect Foods

社名 / サービス名 Imperfect Foods(インパーフェクトフーズ)
国・地域 サンフランシスコ USA
カテゴリ 食品デリバリープラットフォーム
ビジネス概要 品質に問題がなくても見た目や規定のサイズに合わないなどの理由で廃棄されてしまう食品を集め、顧客の希望やライフスタイルに沿った食品を毎週届けるサービスを提供している。卵や牛乳、その他乳製品などはケージフリーやサステナブルな家畜業を行っているもの、肉や魚はアニマルウェルフェアやサステナブルの規格をクリアしたもののみを取り扱うなどサステナブルな食を家庭に届けることに特化している。
またスナックなどのオリジナル商品も展開しており、材料には廃棄されてしまう食品を使用している。B corpの認証も受けており、会社としてフードウェイストを減らすこと、そして2030年までにnet-zeroを目指している。
調達VC(リードのみ) Norwest Venture Partners
Hamilton Lane
Insight Partners
累計調達額 $229.1M(2021年5月時点)
ステージ Series D
ホームページ https://www.imperfectfoods.com/
Imperfect Foods
(出典元)https://www.imperfectfoods.com/food-waste

AllPlants

社名 / サービス名 AllPlants(オールプランツ)
国・地域 ロンドン イギリス
カテゴリ 食品デリバリープラットフォーム
ビジネス概要 植物性のReady to Eatと言われる調理済みのミールを提供するB corpの認定を受けているスタートアップ。プラントベースの食に特化したシェフによって手作りされたミールが冷凍された状態で家庭に配達される。
全てのメニューが栄養管理士によって管理されており、100%植物由来であっても栄養バランスが保たれている。また食事が作られているキッチンは100%再生可能エネルギーで電力供給しており、フードウェイストを極力減らす上に余ってしまう食材やキャンセルになったミールを地域の必要としている人々に届けている。
パッケージにはジーンズなど廃棄になる予定だった素材がアップサイクルされて使われており、梱包材や食品パッケージはAllPlantsに返すことにより繰り返し使えるように設計されている。こうした環境に優しい栄養豊富な食を必要な人に届けることをモットーにしており、学生へのディスカウントサービスに加え、エッセンシャルワーカーや高齢者に向けたディスカウントサービスも行っている。
調達VC(リードのみ) Molten Ventures
Seeders
累計調達額 £52.8M(2021年8月時点)
ステージ Series B
ホームページ https://allplants.com/
AllPlants
(出典元)https://allplants.com/sustainability

Crisp

社名 / サービス名 Crisp(クリスプ)
国・地域 アムステルダム オランダ
カテゴリ E-コマース
ビジネス概要 オランダ全土で展開されているアプリ限定の配達スーパーマーケットサービス。注文があってからオーダーをかけるためストックを持っていないのが特徴。商品は一般のスーパーと同等価格を維持している。
クリスプと提携する多くの農家が環境再生型農業に取り組んでおり、虫やその他生物との共生しながら作物を育てていたり、オーガニックの農家で余った穀物を食べさせて育てた鶏の卵や肉であったり、質の高い商品を供給するサーキュラーシステムが採用されている。
700以上の農家や企業と提携しており、全ての商品の生産者がわかるようになっている。配送に使う梱包にも拘り、少ない梱包や緩衝材で環境への負荷を減らしているだけではなく、物流センターはソーラーパネルから得る電力で稼働しており、配送車も電気自動車の割合を年々あげている。
調達VC(リードのみ) Target Global
累計調達額 €46M(2021年5月時点)
ステージ Series B
ホームページ https://www.crisp.nl/
Crisp
(出典元)https://www.crisp.nl/over

(リサーチ:Onab ESG Team 編集:Onlab事務局)

投稿環境負荷を軽減するフードテック「デリバリープラットフォーム」スタートアップ紹介Open Network Lab (オープンネットワークラボ)の最初に登場しました。

環境負荷の低減とエネルギーの運用を効率化する「xEMS(エネルギーマネジメントシステム)」スタートアップ紹介

国内海外 ESGスタートアップ xEMS編
国内海外 ESGスタートアップ xEMS編
国内海外 ESGスタートアップ xEMS編

このシリーズでは、気候変動やガバナンスなどESG分野に取り組む技術・サービスを提供する国内外のスタートアップを紹介します。「ESGテーマ」といっても領域や内容はかなり幅広く多岐に渡るので、切り口として、領域・キーワード・用語毎に調査したスタートアップ概要をご紹介しながら、最終的にはESGスタートアップカオスマップを目指していきます。

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今回のテーマは、xEMS(エネルギーマネジメントシステム)です。

不動産テックは大きく分けて、次世代電力網と呼ばれる新たな電力供給システムの「スマートグリッドシステム」と、そのエネルギーの使用状況をリアルタイムに把握し最適化するシステムや支援ツールの「エネルギーマネジメントシステム」の2つがあります。

今回はその中でもエネルギーマネジメント(通称:xEMS)の分野に特化しているスタートアップをご紹介します。xEMSのxは変数で、住居ならHomeのH、ビル全体であればBuildingのB、工場であればFactoryのFというようにさらに細かい名称に分かれており、主にITを活用した電力やガス等、空気調和工学の可視化 / 制御ツールの提供するエネルギーマネジメントシステムのことを言います。

この分野のスタートアップはエネルギー需給状況の「見える化」と、環境変化(気温、日照、季節等)やエネルギーの需給状況に対応して設備・機器のエネルギーを制御するサービスを展開するスタートアップが主流となっています。

Carbon Lighthouse

社名 / サービス名 Carbon Lighthouse(カーボンライトハウス)
国・地域 サンフランシスコ、カルフォルニア
カテゴリ(✕別カテゴリ) BEMS (Building Energy Management System 読み:ベムス)
ビジネス概要 大規模な商業ビルへ電力の効率化を独自のAIを用いて測定できるサービスを提供している。「CLUES」(Carbon Lighthouse Unified Engineering System)というデータ分析システムを開発。CLUESは、顧客企業の不動産に取り付けたセンサーから気温やエネルギーの利用状況などのデータをリアルタイムに収集し、分析する。すでにビルや商業施設にある設備でどう削減するかに特化してるGoldman Sachs, The Carlyle Group, L&B, AEWやOhana等大手AssetManagement会社を顧客に持ち、$250M以上の価値向上に貢献。
調達VC(リードのみ) GRC SinoGreen Fund
CEAS Investments
Cox Enterprises
累計調達額 $67,100,000(2020年8月時点)
ステージ Series A
ホームページ https://www.carbonlighthouse.com/
Carbon Lighthouse
Carbon Lighthouseのホームページより

enode

社名 / サービス名 enode(エノード)
国・地域 ノルウェー
カテゴリ(✕別カテゴリ) HEMS (Home Energy Management System 読み:ヘムス)、BEMS
ビジネス概要 EV、家庭用充電器、バッテリー、暖房など今まで分散していた家庭のエネルギーを使うシステムを一つのエネルギー管理アプリに接続するAPIを開発。再生可能エネルギーを最大限に生かしたエネルギーマネジメントを可能にすることで、企業のESG対策を助けるほかコストカットにも貢献している。
調達VC(リードのみ) Lowercarbon Capital
My Climate Journey Collective
BoxGroup
Y Combinator
累計調達額 非公開
ステージ Seed
ホームページ https://www.enode.io/
enode
enodeのホームページより

Sirius Energy

社名 / サービス名 Sirius Energy(シリウスエナジー)
国・地域 ドバイ
カテゴリ(✕別カテゴリ) BEMS
ビジネス概要 太陽光電力の導入とマネジメントのサービスと電力の見える化のサービスを展開している。太陽光電力の導入、マネジメントどちらも企業にとって電力コストの削減につながる上にデータ収集ができ情報開示などに使えるようになっている。ドバイだけでなく近隣のサウジアラビアでもビジネスを展開していてその背景にサウジアラビアでは2030年までに電力の50%を再生可能エネルギーにしようとしている上に2019年のデータでは約63%を石油、約37%をガスに頼っていることもあり石油に頼らないことを国として目標に掲げていて様々なプロジェクトが行われているのが後押しになっている。
調達VC(リードのみ) 非公開
累計調達額 非公開
ステージ 非公開
ホームページ https://sirius.energy/
Sirius Energy
Sirius Energyのホームページより

(リサーチ:Onab ESG Team 編集:Onlab事務局)

投稿環境負荷の低減とエネルギーの運用を効率化する「xEMS(エネルギーマネジメントシステム)」スタートアップ紹介Open Network Lab (オープンネットワークラボ)の最初に登場しました。

不動産×ESGに時代が追いついた。EaSyGoが挑む不動産の価値創出|Meet with ESG Startups vol.4

不動産×ESGに時代が追いついた。EaSyGoが挑む不動産の価値創出|Meet with ESG Startups vol.4
不動産×ESGに時代が追いついた。EaSyGoが挑む不動産の価値創出|Meet with ESG Startups vol.4
不動産×ESGに時代が追いついた。EaSyGoが挑む不動産の価値創出|Meet with ESG Startups vol.4

近年、「企業価値」と「社会的価値」の両立を目指す「ESGスタートアップ」が注目され、国内外のOpen Network Lab(以下「Onlab」)の支援先も増えてきました。

シリーズ「Meet with ESG Startups」では、スタートアップの事業成長と会社経営のあり方や持続可能な社会へのインパクトをどのように創り出していくのか、経営者としての考え方や企業の様々な取り組みについて伺います。

今回登場するのは、ソフト価値を付加する不動産オーナー向けツール「EaSyGo」をはじめとする不動産テックサービスを展開する株式会社GOYOH(以下「GOYOH」)。不動産のESGとは何か、EaSyGoはそれにどう貢献するのか、そのビジネスモデルとは、代表の伊藤幸彦さんに聞きました。

< プロフィール >
株式会社GOYOH 代表取締役 伊藤 幸彦

早稲田大学高等学院を中退後、バックパッカーとして世界70か国以上を長期旅行し、2006年(23歳時)にニューヨークにてホスピタリティ投資会社を起業し、マンハッタンでのサービスアパートメント(民泊)への投資・運用・運営業務を行う。2008年(株)アスタリスクを日本に設立し、国内・海外の機関投資家や超富裕層のクロスボーダーなホテルや不動産、ファンドへの投資アドバイザリー業務を行なう。欧州と米国それぞれの地域で最大級の不動産運用会社(総運用資産9兆円を超える)などの海外投資ファンドのコンサルタントや日本での資金調達、グローバルなホスピタリティ投資JVの事業パートナーを務めるなど、国内・海外の不動産開発者や投資ファンドへのコンサルタントを務める。2016年〜2020年までの間、世界的不動産ESGリーダー、M&G Real Estate社やベントール・グリーンオーク社の日本専属アドバイザーとして、大手生命保険会社などの機関投資家に不動産ESG投資のマーケティングを行う。

ESGのすべてで不動産の価値を上げていく

― まずはEaSyGoについて教えて下さい。「次世代の付加価値となるソフト価値を付加するサービス」と謳っていますね。

GOYOHが開発する「EaSyGo」は、不動産関連企業がESGに取り組むための活動を全般的に支援するサービスです。

今でこそEaSyGoは幅広に「不動産×ESGのためのサービス」と謳っていますが、当初EaSyGoは「脱炭素のためのサービス」とアピールしていました。

― たしかに、OnlabのDemo Dayでもそうピッチしていました。

そうですね。ただこれは「Demo Day当時からEaSyGoが進化した」というわけではありません。当初から今の姿だったのですが、打ち出し方だけ変えていたのです。というのも、今の形式を最初から説明しても、盛り込みすぎで聞いている方が理解できないと踏んだからです。

当時は世間のESGの浸透度も今と比べれば低かった。なので「不動産における脱炭素以外のESGに何が該当するか」という問いに対して、ピンと来る方が少なかったんです。それでシンプルにEaSyGoを、「不動産の脱炭素を計測するサービス」と銘打ちました。だから今、やっとEaSyGoの全貌をお見せできるようになったんです。

― わかりやすさを優先したということですね。不動産のESGで、脱炭素以外の要素とは、例えばどういったものでしょうか。

地域コミュニティへの貢献、働いている方の健康改善、防災対応力の向上などは、全て不動産に関連するESGです。

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不動産のESG領域 (image: GOYOH)

脱炭素については社会的に認知されていることもあって、皆さんがその重要性を理解しています。でもその他の項目については「なぜ企業が取り組まなければならないのか」「誰がそのコストを負担するのか」という問いに、万人が答えをもっている状況ではありません。

CO2削減はもちろん大切。だけど設備投資するにしろカーボンクレジットを使うにしろ、お金はかかるけどそれで直接収益が増えるわけではない。それは持続可能ではありません。なのでESGに取り組むことで不動産の価値をオーガニックに上げることが重要だと、GOYOHでは考えているのです。

では具体的にどうするか。わかりやすいのは「S」である社会(Social)への投資です。働きやすい・住みやすい街やビルを実現できれば家賃を上げられますし、定着率も上がる。ESGの環境(Environment)と社会(Social)に同時に投資して、規制に応えつつも経済的なパフォーマンスを上げる。これをEaSyGoで叶えていきます。

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EaSyGoの特徴は、計測するだけでなく、アクションにもつながる点です。

CO2を例にとりましょう。もちろんその削減のためには、まず見える化が必要です。それが削減のスタートラインであることは間違いありません。しかし本当に大変なのは、そのデータを整理し活用し、削減のためのアクションに繋げること。そのために機関投資家から現場まで全プレイヤーを巻き込めるのが、EaSyGoの本質的な価値なんです。

「このビルがESGにどれだけ貢献したか」を測定する

― EaSyGoが実際にどのような物件で使われているか教えて下さい。

例えば東京・月島にリバーシティ21 イーストタワーズという大きな高層ビル群があります。その内の複数の集合住宅ビルをアクサ・リアル・エステート・インベストメント・マネジャーズ・ジャパン株式会社が保有・運用していて、ここではEaSyGoと連動しているポータルサイトを、住民が使えるようにしました。これは地域コミュニティのための持続可能性を可視化し、改善に取り組むことで、よりよい生活環境を作ることを目的として導入されたものです。

これは他の物件の例になりますが、ポータルサイトの中に「こども食堂への支援キャンペーン」という活動があって、このキャンペーンが盛り上がるほど、このビルがあることによって地域コミュニティに貢献したことがわかる、という仕組みになっています。

またある物件では、ポータルサイトのESG関連のニュースを読んだりシェアしたりするとポイントが貯まって、それを寄付できるといったESG活動を実施。物件ごとに色んな活動ができるようになっています。

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ESG活動の成果がポイントとして算出される(image: GOYOH)

住居だけではなく、オフィスビルでもEaSyGoは使われています。多くの不動産オーナーは、オフィスビルのエネルギー利用量やCO2排出量の計測に取り組んでいます。しかしそのビルで働く従業員がそれらを網羅して把握して関与しているかというと、必ずしもそうではありません。もしEaSyGoが導入されれば、不動産や企業の活動をデータ化して、不動産オーナーとテナントが協働するための施策を打っていきます。

― EaSyGo内では、ESGの達成はどのように評価されているのでしょうか。

項目別にKPIを設定し、評価します。例えばCO2などのエネルギー消費は実数で出てくるのでわかりやすいですね。

一方で、社会(Social)のコミュニティや人々のウェルネスや能力開発への貢献などは、必ずしも効果が一次データだけで計れるわけではありません。なので我々が提供しているプログラムでは、どれだけ仕事で働きやすくなった、といった定性的な指標や、個々の社会的インパクトを定量化する独自の不動産インパクト解析モデルを置いています。

これはGOYOHが独自にモデリングしているものですが、とはいえ必ずしも適当なものというわけではありません。実はGOYOHはULIという世界的な不動産団体での不動産の社会的インパクトについての協議会のコアメンバーでもあります。また、「CRREM」という、欧州を代表する機関投資家が中心となり発足した企業不動産の脱炭素化のための指針となる、気候変動の移行リスクの評価・モニタリングツールへの取り組みに、日本からはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などと共に科学・投資家委員会メンバーとして参画しています。

つまり我々は、不動産ESGにおけるグローバルリーダーとして業界を牽引している存在なのです。なので我々が先んじて作っているKPIは最終的に、こういった世界的なルールと整合するように設定されています。

ESGな運営が、不動産価値増大に繋がる

― 住民やビルで働いている方が、「このビルはESG活動に取り組んでいるんだ」と認識しますよね。それでビルや不動産に対するエンゲージメントは高まるのでしょうか。

もちろん人や状況によりますが、高まるケースが多いですね。そもそも不動産のESG活動に住民や従業員が参加するには、大きく3つのきっかけがあります。

1つ目が、インセンティブ。先程のポータルサイト内の記事を読む、シェアする、アクションする、ポイントがもらえる、などです。2つ目は、例えばシェアリングサービスを導入したり、CO2排出量が低い家電を設置したりといった、物理的な介入。これは不動産ならではのタッチポイントであり、きっかけですね。

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最後に、コミュニティ。通常、自分が住んでいる・働いている場所は「いいコミュニティ」にしたいですよね。例えば高級住宅街が高級住宅街である由縁は、そこに住むことで良い教育が受けられたり、周りの住民との良い関係性によるものです。だから世界的な大都市では同じ建物なのにエリアによって2倍も3倍も価格が違う、といった現象が起きるわけですよね。

コミュニティもESGも同じです。ESGにちゃんと取り組んでいる不動産には、ESGに価値を見出す方々が集まってくる。なので住民や企業がESG活動に貢献すると、不動産の価値が上がって家賃が上がり、結果的にオーナーの収入も増える、というわけです。

― なるほど。最近はオフィスのテナント企業もESGに取り組んでいるのでしょうか。

今の時代はESG目標を設定している会社が多くなってきています。その中にはテナントとして達成したいESG目標を掲げている会社もあるでしょう。不動産に該当するところだと、省エネやバリアフリーがすぐに思い浮かびます。ただ、オフィスビル側が気づいていないだけで、実際にはもっと多種多様なニーズがテナントにはあるんです。

これを見逃したり放置することで、テナントが退去してしまったり、収益機会を逃すことになってしまう。「自分たちのESG基準が達成できないビルだ」と判断されてしまいますからね。グローバルに競争力がある企業ほど、高いESG基準を入居オフィスにも設けています。それは彼ら企業が優秀な人材を確保する上でも非常に重要だからです。

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社会面を含むESGへのオフィス不動産での取り組みが、企業における優秀な人材の確保に繋がることは間違いありません。その結果企業は、生産性の向上といった非常に大きなレバレッジ効果を得られるでしょう。また「こういう施策をテナントのためにやっているビルです」というアピールは、新たなテナントの誘致や既存のテナントの定着にも大きな武器になります。

不動産ESGは投資家から生活を営むすべての人まで、同じ方向を向かせること

― EaSyGoを使うことで、みんながwin-winになる関係を整えるんですね。とすると、EaSyGoはどなたが導入のきっかけとして顧客になるのでしょうか。

EaSyGoの直接の顧客は、主に不動産の機関投資家や不動産ファンドと言われる方々であることが多いですね。彼らが投資不動産の価値の保全や向上のために導入するんです。

そもそも不動産には大きく、機関投資家、運用会社、管理会社、ビルメンテナンス会社というプレイヤーがいます。今、不動産テックといわれるサービスはたくさんありますが、そのほとんどが、管理会社やビルメンテナンス会社向けにサービスを提供している。それに対してEaSyGoは、機関投資家向けにサービス提供しているのがポイントです。

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(image: GOYOH)

しかし、EaSyGoが運用会社、管理会社、ビルメンテナンス会社に関係がないかというと、もちろんそんなことはありません。EaSyGoはまず機関投資家に導入され、その機関投資家が運用会社やビルメンテンナンス会社にEaSyGoを使うように巻き込んでくれる、という仕組みになっていて、結果的にEaSyGoはすべてのレイヤーで使用されるサービスとなっています。

実は私を含めたGOYOHの中核メンバーはもともと、海外の大手不動産ファンドの資金調達支援を事業としていたアスタリスクという会社のメンバーなんです。つまり日本の機関投資家が海外の大手不動産ファンドのESG戦略に出資する際のお手伝いをしているので、もともとグローバルに不動産ファンドや機関投資家との密接なコネクションを持っている。なので彼らがどういう項目を気にしているのかは全てわかっています。それをDXしたのが、このEaSyGoというサービスなんです。

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ここで重要なことは、海外の大手不動産ファンドや機関投資家は、先進的なESG経営企業だということです。そのためESGに気を配っていない不動産には投資し続けません。

例えばアクサ IMなど世界トップレベルの投資家は、GRESBやTCFDといったESG開示やベンチマークや認証に積極的に取り組んでいたり、金融市場でのカーボンゼロの枠組みを推進するなど、ESGのマーケットリーダーでもあります。しかし不動産の領域では、ESG活動への課題も掲げています。課題は(下図右2つの)テナント啓蒙や内部ESG評価です。

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(image: GOYOH)

(上図の)左の4つはハード面が中心の話なので、投資家がお金をかければ解決できるんです。しかし(右2つの)ソフト面はそうはいきません。人との関わりや行動変容を促すということは現場で対応することなので、どうしても機関投資家では対応できない。一方で現場の方が自発的に取り組むかというと、それをやる価値を理解していなければやりません。だからEaSyGoを使って、現場の方々がやる理由を設定することが大事なんです。

― 最後に、これからESGに特化したスタートアップを起業する学生や、ESGに参入しようとしている方々に、メッセージをお願いします。

ESGは学生にとって非常に良いチャンスだと思います。特に社会(Social)は色々な取り組みの場があるのではないでしょうか。GOYOHでも、大学で環境経済学を学んでいる方がフードロスをなくすためのキャンペーンを引っ張っていたり、人権を専攻している方が職場環境の改善プロジェクトに携わったりしています。

今までこういった活動はお金になりにくかったこともあって、ビジネスから関心をもたれませんでした。でも今は時代が変わってきている。こういった活動に取り組まないと、社会からちゃんとした会社だとみなされないからです。社会に役立つための知識が、ビジネスやキャリアとして成り立つ舞台が用意されている。これはすごいチャンスですよ。

easygo

個人的にはこのチャンスの先には「CSO(Chief Sustainability Officer)」が待っていると思っています。今、企業でSustainabilityやESGへの取り組みが必要とされていますが、人材が全く足りていない。それもそのはず、そんなキャリアを送ってきた人がいませんから。新しい分野については中堅どころを育てるより、若い方に挑戦してもらったほうがいい。そこで成功すれば非常に価値の高い人材になれるのではないかと思います。

(執筆:pilot boat 納富 隼平  撮影:taisho  編集:Onlab事務局)

投稿不動産×ESGに時代が追いついた。EaSyGoが挑む不動産の価値創出|Meet with ESG Startups vol.4Open Network Lab (オープンネットワークラボ)の最初に登場しました。

スタートアップが知っておくべきESG用語集

スタートアップが知っておくべきESG用語集
スタートアップが知っておくべきESG用語集
スタートアップが知っておくべきESG用語集

国内外でデジタルガレージが出資する企業やOpen Network Lab(以下、Onlab)の支援先にはあらゆるサービスが存在していますが、昨今「企業価値」だけでなく「社会的価値」の両立を目指す「ESGスタートアップ」が注目されています。しかしESGの範囲は非常に広範で多岐に渡り、すべてをいきなり理解するのはとても困難です。

そこでOnlabでは、スタートアップ・ビジネスで特に頻出のESG用語を厳選して用語集として解説します。これだけ抑えておけば、スタートアップのピッチを聞いたり、記事を読んだりするときでも、意味がわからなくて困ることが少なくなること間違いなしです。ぜひチェックしてみてください。

※用語集は、不定期に更新します。

ESG
企業が持続的に事業を成長させ、企業価値を向上させる為のE(Environment / 環境)、S(Social / 社会)、G(Governance / ガバナンス・企業統治)という3つの要素。気候変動や世界経済状況、労働環境や組織体制などのESG要因が、企業の持続可能性や長期的な事業経営に影響を及ぼすリスクとなり得るとして、収益を追求する企業を含めた全ての企業に対して、ESGを考慮する事業経営の必要性が説かれている。
SDGs
持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)。2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。
参考外務省
ウォッシュ
マーケティングのためだけに、組織の製品やサービスを環境に配慮しているように見せかける行為のこと。例えば、実際にはそうでないのに環境に良さそうに装うことを「グリーンウォッシュ」、ESG全般に配慮しているかのようにみせかけることを「ESGウォッシュ」と呼ぶ。
B-corp(B Corporation)
米・ペンシルベニア州に拠点をおく非営利団体B Labが運営する、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度。ガバナンス、従業員、コミュニティ、環境、カスタマーの5つの分野から構成される評価を受け、ステークホルダーへB-Corpへのコミットを宣言することが認証条件となっている。B Corpの認証を受けるためには、オンライン認証試験「B Impact Assessment」で200の質問のうち80以上をクリアする必要がある。取得後も3年ごとに更新が必要となっている。
参考B-corp
サステナブルファイナンス
社会的課題の解決に資する資金やアドバイスを提供する金融手法。気候変動や格差、人口減少等の社会的課題への対応が急務となる中で重要性が高まっている。特に脱炭素については、世界全体で設備投資や技術開発に官民合わせて巨額の資金が必要とされており、企業の取り組みを支える民間金融の機能発揮が欠かせなくなっている。
統合報告書
財務情報と非財務情報を統合して報告するレポート。開示義務のあるものではないが、企業の社会的責任を果たすため、また投資家を含めたステークホルダーとのコミュニケーション促進を目的として、近年開示する企業が増加している。開示項目として例えば、マテリアリティ(企業が取り組む重要課題)、経営理念、中期経営計画、価値創造活動、財政状態・経営成績、経営戦略などのが挙げられる。
BCP
Business Continuity Plan(事業継続計画)。企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと。
参考中小企業庁
パーパス
「何のために存在するのか」という問いに答える「企業の存在意義」のこと。ステークホルダーとの関係性構築や、従業員のエンゲージメント高めることなどを目的とすることが多い。
例えばサイバーエージェントは「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」、デジタルガレージは「持続可能な社会に向けた“新しいコンテクスト”をデザインし、テクノロジーで社会実装する」とパーパス定義している
インパクト志向金融宣言
金融機関の存在目的は包括的にインパクトを捉え環境・社会課題解決に導くことである、という想いを持つ複数の金融機関が協同し、インパクト志向の投融資の実践を進めて行くイニシアティブのこと。みずほ銀行や三菱UFJフィナンシャル・グループ、デジタルガレージのCVCであるDGインキュベーションなども署名している。
ESGインテグレーション
ESG投資の手法の一つで、ESG情報を詳細に分析し、その結果を踏まえて投資判断する手法のこと。財務情報だけでなく環境や社会問題への対応など、企業のESGに関する取り組みを投資に際して総合的に考慮する。
インパクト投資
経済的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資。類似概念に「ESG投資」があり、これは従来の財務情報だけでなく、ESG要素も考慮した投資のことで、ESG投資はリスク・リターンを最大化・適正化する為に環境や社会への影響を考慮するものだが、他方でインパクト投資は環境や社会へのポジティブな変化を生み出すことがそもそもの投資目的と位置づけられている。
参考一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)
持続可能性(サステナビリティ)
環境や社会、企業、経済などあらゆるシステムが、将来にわたってその機能を適切に維持される状態のこと。近年では、社会のサステナビリティと企業のサステナビティを同期化し、長期の時間軸の中で、社会課題を経営に取り込むことで企業の稼ぐ力を強化していく「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」が提唱されている。
参考経産省
パリ協定
2015年に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択されて、機構変動に関する国際的合意。京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みとして期待され、気温上昇を2℃未満に抑制する、5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する等の特徴をもつ。
参考外務省
温室効果ガス(GHG)
二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなどの、地球の気温を高める効果のあるガスの総称。GHG(GreenHouse Gas)とも呼ばれる。大気中の温室効果ガスが増えると、温室効果が強くなり、より地表付近の気温が上がり、地球温暖化につながる。
カーボンフットプリント
商品・サービスのライフサイクルの各過程で排出された「温室効果ガスの量」を追跡した結果、 得られた全体の量をCO2量に換算して表示すること。温室効果ガスだけでなく、その他の環境負荷になるものを含めて計算する場合には環境フットプリントと呼ぶこともある。
例えばアメリカのスニーカー・スタートアップのオールバーズは、製品ごとのカーボンフットプリントの数値を測り公表している。
炭素クレジット
温室効果ガスの排出削減量証明。森林保護や省エネ技術、再生可能エネルギーを活用し、温室効果ガスの排出削減効果や二酸化炭素吸収についてクレジットとして取引できる形にしたもの。カーボンクレジットとも呼ばれる。
Climate Tech
Climate(気候)とTechnology(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、気候変動やそれに伴う諸問題を解決するためのテクノロジーのこと。例えば二酸化炭素排出量に関するデータを見える化・管理するためのサービスや、気候データを分析するためのSaaSなどが挙げられる。
労働基準法
労働条件の最低基準を定め、労働者を保護する法律。賃金の支払いの原則、労働時間の原則、時間外・休日労働、割増賃金、解雇予告、優勝労働契約などを定める。働き方改革やワークライフバランスが謳われるなかで、労働基準法の遵守も改めて注目されている。
働き方改革
働く方々が、個々の事情に応じた柔軟で多様な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革。日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要である。働く人の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指す。
参考厚生労働省
DE&I
ダイバーシティ、エクイティーアンドインクルージョン(Diversity,Equity and Inclution)の略。ダイバーシティ(多様性)、エクイティー(公平性)とインクルージョン(受容・包括)というそれぞれの視点から、性別や性的指向、年齢、障がい、宗教、国籍、価値観、働き方などを異にする多様な人材を、差別なく公平に受けいれること。条件を平等(equality)にするだけでなく、公平(equity)にすることを推進するため、近年では従来のD&Iでなく、DE&Iと呼ばれるケースが多くなっている。
フェアトレード
経済的、社会的に立場の弱い生産者に対して、通常の国際市場価格よりも高めに設定した価格で継続的に農作物や手工芸品などを取引することで、発展途上国の自立を促すこと。取引価格だけでなく、生産者の労働条件や技術指導、環境や人権などにも配慮した取り組みが求められる。
参考外務省
トレーサビリティ
商品が生産され消費されるまでの過程が追跡できること。商品に問題があった際の原因調査や、商品に関する説明責任を果たすための手段として使われる。近年においては、ブロックチェーンがトレーサビリティを支えるテクノロジーとして注目されている。
サーキュラーエコノミー
循環型経済。従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動のこと。サーキュラー・エコノミーへの移行を実現する上では、幅広いステークホルダーの中でも、とりわけ、技術・ビジネスモデルのイノベーションをリードすることが望まれる企業と、事業の推進力となる資金を供給・循環する投資家・金融機関の果たす役割が重要とされている。
参考経済産業省
ゼロウェイスト
「ごみをゼロにする」ことを目標に、製造過程から一貫してできるだけ廃棄物を減らそうとする活動のこと。ごみを減らしたり資源の浪費を避けながら、再生可能エネルギーを利用したり、リサイクルや新たな価値を持たせるアップサイクルし、ごみをゼロにする。
アップサイクル
本来捨てられるはずの製品に、デザインやアイディアといった新たな付加価値を与え再生させること。サステナブルが重要視される現代において注目を浴びている。リサイクルが原料に戻すことを指すのに対し、アップサイクルは素材をそのまま生かし、新たな製品に生まれ変わらせる。
例えばデニムをバッグにしたり、端材をテーブルにしたり、パンを原料にしたビールなどが挙げられる。
エシカル消費
地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動のこと。例として、フェアトレード認証商品や売上金の一部が寄付や支援につながる商品の選択、地産地消の推進、被災地応援購入、マイバッグ・マイボトル利用、資源保護商品の購入、LED電球の利用などが挙げられる。
参考消費者庁
食品ロス
まだ食べられるのに廃棄される食品のこと。2020年における日本国内の食品ロスは522万トンと言われている。これは世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量(2020年で年間約420万トン)の1.2倍に相当し、また食品ロスを国民一人当たりに換算すると茶碗約1杯分(約113g)の食べものが毎日捨てられている計算となる。小売りの前段階のフードサプライチェーンの途上で発生する「フードロス」と、小売り・消費段階で発生する「フードウェイスト」に分類することもある。
ヴィーガン
完全菜食主義者。可能な限り動物から作られたものの摂取を避けること。ベジタリアンが魚、卵、乳製品を摂取ケースが多いのに対し、ヴィーガンはそれらの摂取もしない。食事に関して言われることが多いが、それに限らず衣食住のすべてで動物が使用されていることを避ける、という意味合いでも使われる。
代替肉
従来の家畜などから取られた肉ではなく、その他の方法で生産された肉、または肉を模したもの。大豆や小麦を使って肉を再現した代替肉や、動物の細胞を体外で組織培養した培養肉などがある。
急増する世界人口に食料生産が追いつかなくなるという危機感や、家畜から排出されるメタンガス抑制、また家畜にとってストレスや苦痛の少ない飼育環境を目指すアニマルウェルフェアなどの観点から、現在研究が進んでいる。
生物多様性
動物から菌類などの微生物まで、地球上に生息するすべての「いきもの」たちが支えあいバランスを保っている状態のこと。「生態系」「種」「遺伝子」と3つのレベルがある。生物多様性のバランスが崩れることで、自然環境の破壊や、土砂崩れなどの災害が生じる可能性が出てくる。またアニマルウェルフェアの観点からも生物多様性の重要性が主張されている。
参考JICA
再生可能エネルギー
石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとは違い、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など、自然界に常に存在するエネルギーのこと。その特徴は「枯渇しない」「どこにでも存在する」「CO2を排出しない(増加させない)」の3点である。太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存在する熱、バイオマスの7種類が法令(エネルギー供給構造高度化法施行令)では定められている。
参考関西電力
x-EMS
デジタルを活用した電力やガス等のエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)のこと。工場やビルなどの施設におけるエネルギー使用状況を見える化し、最適なエネルギー利用を実現するためのシステム。「x-EMS」の x には、H(Home)やB(Building)C(Community)などが入る。
スマートグリッドシステム
デジタルテクノロジーを使って、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網のこと。過程やオフィス、工場などでにおける電気の発電量や供給量を遠方から調整できるため、必要な電力を必要なだけ送信できる技術となっている。
マイクロプラスチック
直径5ミリメートル以下の微細なプラスチックごみの総称。洗顔料・歯磨き粉といったスクラブ剤などに利用される一次マイクロプラスチック、ビニール袋やペットボトルなどが海へ流出し紫外線による劣化や波の作用などにより破砕されてマイクロサイズになった二次マイクロプラスチックとがある。マイクロプラスチックには海洋生態系へ影響を及ぼすと言われており、対策が必須となっている。

(執筆:pilot boat 納富 隼平 編集:Onlab事務局)

投稿スタートアップが知っておくべきESG用語集Open Network Lab (オープンネットワークラボ)の最初に登場しました。

電動マイクロモビリティのシェアリング「LUUP」は街のインフラに。ESGスタートアップに必要な定量的インパクト|Meet with ESG Startups vol.3

電動マイクロモビリティのシェアリング「LUUP」は街のインフラに。ESGスタートアップに必要な定量的インパクト|Meet with ESG Startups vol.3
電動マイクロモビリティのシェアリング「LUUP」は街のインフラに。ESGスタートアップに必要な定量的インパクト|Meet with ESG Startups vol.3
電動マイクロモビリティのシェアリング「LUUP」は街のインフラに。ESGスタートアップに必要な定量的インパクト|Meet with ESG Startups vol.3

国内外でデジタルガレージが出資する企業やOpen Network Lab(以下、Onlab)の支援先にはあらゆるサービスが存在してますが、昨今「企業価値」だけでなく「社会的価値」の両立を目指す「ESGスタートアップ」が注目されています。このシリーズではスタートアップの事業成長と会社経営のあり方や持続可能な社会へのインパクトをどのように創り出していくのか、経営者としての考え方や企業の様々な取り組みについて伺っていきます。

今回登場するのは、株式会社Luup 岡井大輝さんです。同社が提供する電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」は、都心部や地方都市で導入が進んでおり、街中で緑基調の電動キックボードや小型電動アシスト自転車を見たことがある方も多いのではないでしょうか。Luup代表の岡井さんは、マイクロモビリティ推進協議会の会長も務め、電動マイクロモビリティの安全な社会実装に尽力しています。単なる便利な移動手段を超えて、街のインフラと化しているLUUP。ESG・SDGsの観点も経営に生かしているようです。
※ Luupは会社名を、LUUPはサービス名を表しています。

< プロフィール >
株式会社Luup CEO 岡井 大輝

東京大学農学部卒業。その後、戦略系コンサルティングファームにて上場企業のPMI、PEファンドのビジネスDDを主に担当。その後、株式会社Luupを創業。代表取締役社長兼CEOを務める。2019年5月には国内の主要電動キックボード事業者を中心に、新たなマイクロモビリティ技術の社会実装促進を目的とする「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、会長に就任。

安全性に配慮した対策と公共交通機関を目指した新デザイン

― Luupは2022年2月にロゴの刷新を発表されたそうですね。保安基準を満たさずに走行している電動キックボードと、適法な車両を提供しているLUUPとを見分けやすくすることが、目的の一つと伺いました。

おっしゃる通り、LUUPはコーポレートロゴおよびサービスロゴを刷新し、電動キックボードのデザインも合わせてアップデートしました。夜間の視認性の向上や、安定性を改善しました。

LUUP
(image: Luup)

まず残念ながら、保安基準を満たさずに走行している電動キックボードが多い事実を指摘しなければなりません。家電量販店やECサイトで売られているようなものは、私有地の中で許可を得た上で走行する分には問題ありませんが、公道を走行するためには、購入後にナンバープレートやミラーの装着などが必要です。こういった保安基準を満たさない車両が公道を走行し、多数の事故を起こしてしまっていることも事実です。実際に、電動キックボードの事故の87%が保安基準を満たさない個人所有の車両だという警視庁のデータが報道されていました。

電動キックボードの事故・違反が増えると、当然メディアでも報道が増えます。ただ、事故を起こしたのは違法な電動キックボードでも、ニュース映像で使われるのはLUUP、ということも多かったんです。当然ながらLUUPは法令に準拠して車両を製造していますし、安全性に配慮して設計していて、その結果として事故も保安基準を満たしていない機体と比較して少なく抑えられています。見た目が、一般に売られている電動キックボードに似ていることによって受けてしまう誤解が大きかったので、それを避けるためにもロゴの刷新を決めました。新しいロゴでは、緩和曲線(クロソイド曲線)という、街中の道や高速道路にも使われている、曲がる時の曲率が一定になる曲線を使っています。LUUPは公共交通機関になるというメッセージも込めて、この曲線を採用しました。
https://note.com/luup/n/n83d53e8c08fb

― 安全性に配慮した設計ということで、LUUPの電動キックボードの安全対策の例を教えてください。

これはLUUP独自のものではなく、実証実験に参加している事業者に共通している安全制御の1つなのですが、ハードウェア面では例えば、最高速度を15キロに制限しています。また法的には時速20キロ以下の原付にはウインカーは不要なのですが、LUUPの車両には安全性を考慮して装着しています。保安基準・法令遵守の面から当然なのですが、ナンバープレートやミラーも備えています。ソフト面では、加害者が被害者に対して補償する自賠責保険への自動加入が挙げられます。さらに、任意保険にも全車両に対して当社で一括加入しており、ユーザーはご利用と同時に当該保険の適用対象となります。対人・対物だけでなく、ご自身の怪我も補償できるようになっています。

また事前に関係省庁監修の交通ルールテストに全問正解しないとLUUPには乗れません。東京海上ホールディングス株式会社とは資本業務提携を締結しており、直近は共同で「電動キックボード ご利用ガイドブック」を制作し、Webで全ページを公開している他、安全講習会等で配布しています。一方で、事前の免許証登録や交通ルールテストなどを実施しているにもかかわらず、一部の悪質な利用者による違反行為が発生していることも事実です。そのような違反行為に関しては、警察と連携し、重大であると確認できた際にはアカウント凍結等の措置を行っています。

(参考)【注意喚起】LUUPをご利用の皆様へ
https://luup.sc/news/luup-safety-measures/

LUUP
(image: Luup)

運転免許がなくても電動キックボードに乗れるようになる?

― 位置情報と言えば、内閣府及び準天頂衛星システムサービス株式会社が公募した、準天頂軌道衛星を使った衛星測位システムの実証事業に採択されていました。

当然GPSでも位置情報は取れているのですが、精度に課題があるんです。例えば「特定の道では安全のため、遠隔で減速させたい」というケースが今後発生するかもしれません。しかし、GPSでは位置情報の精度が十分ではありません。一方で、準天頂軌道衛星を使えば、誤差数cmの範囲等のかなりの高精度で車両がどこを走っているかリアルタイムで把握できることが見込まれています。まだ実証実験段階ですし、費用や技術の問題もありますが、中長期的には位置情報をうまくサービスに活用したいです。

― LUUPはどんどん進化していますね。車両はどのくらいの頻度でアップデートしているのでしょうか。

LUUPの自転車をローンチしたのが2020年、電動キックボードが2021年。もちろんその前から開発はしていて、そこからカウントして今11回アップデートしています。テクニカルなアップデートもありますし、法令に適合させるためのアップデートもありました。

LUUP
(image: Luup)

上図が車両の変遷で、左は私有地用の試作機です。真ん中の車両にアップデートする際にミラーやウインカーを付けたりしていますね。写真ではわかりにくいかもしれませんが、段差を超えられるように車輪がどんどん大きくなり、安定性を向上しています。サスペンションも小さなバネから重厚な金属に変更されたり、充電の規格に応じて車両も変えてきました。その甲斐もあって、当初の車両は数時間しか乗れなかったのですが、今は40km程は走行できるようになっています。詳しいことはまだ明かせませんが、今も新しい車両を開発中です。すごく乗りやすくなっていますので、期待してお待ち下さい。

― それは楽しみですね! 実はインタビューしている私は運転免許をもっておらず、現在LUUPに乗れないのです。今後電動キックボードを免許なしで使えるようになるらしいと聞いたのですが。

2022年4月19日(火)に電動キックボード等の車両区分を新しく定める道路交通法の改正案が衆議院で可決されました。その内容を見ると、16歳以上の方が乗れ、免許は不要とされています。都内では免許を持っていない方も多いので、そういった方はLUUPの電動アシスト自転車を使っていただいています。法改正されて免許が不要になれば、そういった方にも乗っていただけるようになるかもしれません。

― LUUPはデータ分析にも積極的ですよね。どのような分析をしてサービス運営に生かしているのですか?

例えば車両の充電です。LUUPの車両はポートでスタッフがバッテリーの交換をしていますが、全てのポートへ交換しに行っているわけではありません。「車両がこうやって移動したから、今日は特定のルートで特定のポートに充電をしにいけば大丈夫」という計算をして、必要なポートにのみ交換しに行っています。この方式でも、車両のほとんどが充電できている状況です。要はデータに基づいてオペレーションを最適化しているんですね。

環境に優しいから選択する、新しいモビリティを目指すESGの考え方

― Luupは2021年に約20億円の資金調達を実施していますが、昨今投資家からもESG観点の説明は求められはじめていますか?

LUUP
(image: Luup)

そもそもスタートアップで普通の感性をもっていれば、ESGに反する行動は取らないと思うんですよね。なのでインパクト投資する投資家からみれば、ほとんどのスタートアップが投資対象になるかと思います。その中で投資してもらうには、「うちに資本を集中させることが最も人類の前進になります」と説明しなくてはならない。そういう意味では定量的な視点が重要になるかなと考えております。つまり、いわゆるインパクト投資に応えようとするには、規模が必要なんです。「キックボード1台当たりのCO2排出量は自動車の約50分の1です」と主張しても、全部で20台しか稼働していなかったら社会的な意味はありません。数万台になってやっとインパクトが出てくるんです。そういったことは事業計画に反映し、投資家とも議論しています。

― LuupとしてESGへはどのように取り組んでいますか?

ESGの「E(Environment)」は特に意識しています。実は人一人を運ぶための電動キックボードのCO2排出量は、自動車の54分の1しかありません。それもあって電動キックボードは、バルセロナ、パリ、アメリカの一部主要都市など諸外国で環境に優しいモビリティとして普及しています。短距離の自動車移動を電動キックボードに置き換えられれば、環境にも自然と配慮することになります。また中長期的には、LUUPで使用する電源は再生可能エネルギーに切り替えていきます。

次にESGの「S(Social)・G(Governance)」。働く環境という意味では、弊社は最初の緊急事態宣言発令時以降、ずっとフルリモート体制を継続していますし、女性の社員も増え、産休・育休を取られ、復帰された方もいます。またLuupは東京海上ホールディングスから出資を受けておりまして、彼らに第三者の立場からLuupのオペレーションが正しく設計されているかというアセスメントをしてもらっています。

LUUP
(image: Luup)

― SDGsという観点からはいかがでしょうか。

Luupはミッションに”街じゅうを 「駅前化」するインフラをつくる”を据え、短距離移動のための電動マイクロモビリティのシェアリング事業を展開しています。SDGs 目標 11は「住み続けられるまちづくりを」なので、ここへの貢献はしていきたいです。都内を中心に、駅前よりは安価で住みやすいけど、その最寄り駅から徒歩で20〜30分かかる自宅に住んでいる方は大勢います。そういった方々に簡単に利用できるモビリティを提供して、暮らしが豊かになる街づくりに貢献していきたいですね。

今ユーザーの多くは「移動を楽にしたい」「使いやすいから」という観点でLUUPを使ってくれていますが、先述したように欧米では「環境や気候変動に貢献できる移動手段だから」という観点でモビリティを選ぶ方も増えてきているんです。今後日本でもこういう方々が登場してくると思うので、そういう方々に選ばれるサービスにしていきたいですね。

― 街づくりという意味では、 先日地震があった際に、移動手段としてTwitterでLUUPを無料開放していたのが印象的でした。

https://twitter.com/Luup_Official/status/1504129571792486401

社内では「このレベルの災害があった場合、原則として、この施策を実行する」といったルールを決めているので、それに則ってチームが自主的に動いてくれました。今後自治体や地元の方々と連携を深めていく上でルールをアップデートしていきたいと考えていますし、災害時に都度、個別判断を行う必要がありますが、引き続き街のインフラとしての役割を考えていきたいと思います。

インフラという意味では今後、新しく建てられる不動産にはLUUPが基本的には備えられているという状況を目指しています。今は、Luupが営業して不動産に置かせてもらっているわけですが、例えば、自動販売機はきっと営業しなくてもオーナーが自然と設置しますよね。LUUPもそうなっていかなくてはいけないと考えています。自動販売機でしたらどこのメーカーのものを置いても大きくは変わらないかと思うのですが、マイクロモビリティは乗る場所と降りる場所を同じ会社が提供する必要があるためネットワーク効果があります。つまりその地域で最も使われているサービスでないと利用者は便利に使えないわけです。なのでこのままLUUPの設置場所を増やしていけばどこかでしきい値を超え、急激にLUUPのポートが増えていくかと思います。

また、駅から離れた不動産の価値が、LUUPがある街とない街で大きく変わるような状況をつくっていきたいと考えています。通常、首都圏だと駅の前だと地価が高いですし、地方では高速の入口付近の地価が高くなりがちですよね。それと同じように、LUUPがあるから不便が少なく地価が高いという状況にしていきたいです。

本当は都心の観光客やフードデリバリーの方向けにサービスの舵を切ったほうが短期的には売上はたちやすいかもしれませんが、LUUPのやりたいことはそうではない。僕らが向き合うべきMissionから逆算されるユースケースにフォーカスしていきたいと思います。

(執筆:pilot boat 納富 隼平  編集:Onlab事務局)

投稿電動マイクロモビリティのシェアリング「LUUP」は街のインフラに。ESGスタートアップに必要な定量的インパクト|Meet with ESG Startups vol.3Open Network Lab (オープンネットワークラボ)の最初に登場しました。

コオロギを通じて人も地球も健康にしたい。人類にサステナブルな新しい食の選択肢を増やすODD FUTURE |Meet with ESG Startups vol.2

コオロギを通じて人も地球も健康にしたい。人類にサステナブルな新しい食の選択肢を増やすODD FUTURE |Meet with ESG Startups vol.2
コオロギを通じて人も地球も健康にしたい。人類にサステナブルな新しい食の選択肢を増やすODD FUTURE |Meet with ESG Startups vol.2
コオロギを通じて人も地球も健康にしたい。人類にサステナブルな新しい食の選択肢を増やすODD FUTURE |Meet with ESG Startups vol.2

国内外でデジタルガレージが出資する企業やOpen Network Lab(以下、Onlab)の支援先にはあらゆるサービスが存在してますが、昨今「企業価値」だけでなく「社会的価値」の両立を目指す「ESGスタートアップ」が注目されています。このシリーズではスタートアップの事業成長と会社経営のあり方や持続可能な社会へのインパクトをどのように創り出していくのか、経営者としての考え方や企業の様々な取り組みについて伺っていきます。

今回登場するのは、株式会社ODD FUTURE 代表取締役CEOの長田 竜介さんです。サステナブルな食の未来を創り出す選択肢として、コオロギを用いた日本発の代替タンパク質商品「INNOCECT(イノセクト)」を提供する長田さんは、前職の商社でサステナブルな新規ビジネスを調べていた時に昆虫食の有用性や可能性に衝撃を受け、2020年6月にODD FUTUREを立ち上げます。コオロギの栄養価や味、サステナビリティにこだわり、人類にサステナブルな新しい食の選択肢を増やすというミッションを掲げる長田さんに、ODD FUTUREを起業した当時のエピソードや今後の展望についてオンラインで伺いました。

< プロフィール >
株式会社ODD FUTURE 代表取締役CEO 長田 竜介

明治大学卒業後、新卒で商社に入社しアパレル製品のOEMを担当した後、「事業の前提から、その事業が世の中にもたらす結果まで一貫してサステナブルな事業が栄える時代がくる」という想いから株式会社ODD FUTURE を創業。コオロギ食品の開発・販売を主軸とするフードテック事業を中心にサステナブル領域で事業を展開しています。

女性ユーザーに大人気。日本初のコオロギプロテインが誕生したきっかけは「祖父との思い出」

― ODD FUTUREの事業概要を教えてください。

ODD FUTUREは、サステナブルな新しい食の選択肢として、食用コオロギを用いた代替タンパク食品の製造や開発、販売を行っているスタートアップです。コオロギを通じて人も地球も健康にしたいという思いからコオロギを提携工場で養殖し、日本初のコオロギの粉末を原料にしたプロテインやプロテインバー、コーヒー、クリケットパウダーなどを提供しています。

実は、2050年には世界の人口が100億人になることが予想されていて、それに伴う食糧危機が問題視されています。その頃には肉の消費量が現在の2倍になると言われ、100億人分のタンパク質を補うために食料システムの変革が求められています。そんな中で注目されているのが、この昆虫食なんです。栄養価が高く環境への負荷も少ないことから国連食糧農業機関も推奨していますが、市場規模が2025年には1000億円以上、2030年には8000億円になると言われています。

― なぜ、数ある昆虫からコオロギを選択されたのでしょうか。

サステナブルな動物性タンパク質として地球に優しいからです。コオロギは生育スピードが速いので、牛が誕生から成牛になるまで1〜2年かかるところ、コオロギは孵化してから4〜5週間で成虫になり、狭いスペースでも大量に飼育できて収穫効率が良いんです。また、コオロギの栄養価は高く、100gあたりのタンパク質量が牛の約3倍もあります。また、タンパク質を1kg生産する際、牛と比較するとCO2排出量が約30分の1で済みますし、約6分の1のエサ、約6000分の1の水量を必要とするだけなので環境に良いんです。

― 長田さんが昆虫食事業を立ち上げた背景についてお聞かせください。

私は静岡の出身ですが、幼少の頃、幼稚園が終わったら農家を営む祖父のところへ遊びに行っていました。祖父は畑を耕した後、お腹が空いた、と畑から出てきたバッタやミミズをそのまま食べていたんです。これが私にとって初めての昆虫食でした。祖父から「昆虫は栄養があるから食べてみなさい」と差し出される度、逃げ回っていましたけれど(笑)。

その後、私は新卒で商社のアパレル部門に配属されましたが、さまざまな事業領域でサステナブルな新規ビジネスを調べていました。その時、「食」という分野で大豆ミートや培養肉などの代替タンパク質があり、昆虫食もその選択肢として有用性が高いというレポートを発見したんです。同時に、実は祖父が最先端の食生活をしていたんだと知って感動しましたね。「これは面白い事業ができるに違いない」と昆虫食ビジネスにのめり込んでいきました。

― 他社と比較して、御社のサービスではどのような特徴や優位性がありますか?

まず、商品開発力です。昆虫食を扱う会社は何社かありますが、当時は創業者の方が昆虫が好きでずっと研究してきたというようなケースが多く、「昆虫感」をパッケージや味など全面に出している商品がほとんどだったんです。その点、弊社では良い意味で昆虫自体にはあまり興味のない食品メーカーで商品開発の経験を積んできたメンバーやマーケターとともに商品を作っているので、昆虫のイメージや味をほぼ感じることのない、コオロギのタンパク質を豊富に含む持続可能なプロテインブランドを提供しています。

次に、私たちには原料の強みがあります。他社では、真っ黒でやや怖い見た目をしたコオロギを使用することが多いんですが、私たちが養殖しているヨーロッパイエコオロギは淡白な見た目をしていて、思ったよりも気持ち悪くない。このビジュアルの違いが風味にも表れていて、イノセクトの商品は炒ったナッツのような香ばしさが特徴で、料理の隠し味として楽しむこともできます。

― どのようなお客様がINNOCECTの商品を購入していらっしゃいますか?

主に30〜40代の女性です。日頃から健康への意識が高く、自分だけでなく地球にも良いことをしたいと考える方や、お子さんへ新しい未来を繋いでいくためにサステナブルなものを消費したいと願う方もいらっしゃいます。また、これまでのプロテイン商品では牛由来のホエイプロテインが使用されていて、お腹を下しやすかったり体に合わなかったりする場合もあったのですが、イノセクトのプロテインを定期購入しているお客様からは、コオロギ由来であればお腹を壊すことがないし、ブレンダーでスムージーに混ぜておいしくタンパク質を摂れると喜んでいただいています。

100社以上に断られてもやめなかったコオロギプロテインの開発。時代が追いつくまでの苦難

― 2020年6月に創業して現在に至るまで、どのような試行錯誤がありましたか?

苦労したことは3つあります。まず、扱う商材が昆虫であること。この数年でヨーロッパ、特にスイスやドイツでは昆虫食を展開するスタートアップが生まれて注目を浴びていますが、創業当初、日本ではまだ市民権がありませんでした。ここに第三の選択肢を作りたいと考え、コオロギプロテインを開発しながら製造委託ができる工場を探しました。1日約100件、北海道から九州にかけて片っ端から食品工場に電話しましたが、どの工場からも「コオロギの原料なんてラインに入れられない」と門前払いをくらいました。これは他の食品原料だったら味わうことのなかった苦労だったと思います。結果、約100-200件くらいの電話をかけてようやく1社が「面白そうだ」とおっしゃっていただき、コオロギプロテインを製造していただくことになりました。

2つ目は人集めです。起業準備をしていた2019年では、現在ほど昆虫食が認知されていなかったので、友人知人を事業に誘っても「人生をかけてやるにはリスクが大き過ぎる」と断られてばかりでした。創業した後も、コオロギの原料を求めて海外の工場を回ったり、国内で製造委託ができる工場を探したり、商品開発やマーケティングをしたり、ECサイトを立ち上げるといった全てのオペレーションを1人で進めていきました。そうしているうちに昆虫食が少しずつテレビや雑誌に取り上げられたり、無印良品のような大手専門小売業が参入したりすることで、世の中が「昆虫食の事業ってすごい」へ変わっていったんです。それに並行して、一緒に働きたいという応募が増えたのを覚えています。

3つ目の苦労は、創業期の売上です。やはり、昆虫食が受け入れられていない時代に売上を作るのは難しかったですね。どうしても莫大な先行投資が必要になるので、商品を売る前に、コオロギがおいしく食べられることや、既存のホエイプロテインよりも栄養が高くサステナブルであることを啓蒙しなければなりませんでした。ここに人的リソースが割かれてしまい、初期の資金繰りが厳しくなって売り上げが立たない時期もありました。創業から1年数ヶ月後、昆虫食に参入する企業が増えてきたことにより、ようやく事業が安定してファイナンスも行えるようになりました。

― お客様へ昆虫食を認知してもらうのに苦労したとのことですが、どのようにブランドを醸成していきましたか?

当初はターゲットや性別を絞らずに商品を展開し、パッケージも現在のパステルカラーではなくクラフト紙でした。ところが実際にリリースしてみると女性のお客様が多かったので、よりご評価いただけるようにブランディングを変え、健康や環境に対する意識が高い方々にターゲットを絞ってアプローチをしていきました。例えば、インスタグラムであれば、おしゃれで綺麗な写真を掲載するような方々にイノセクトの商品をご利用いただいてから、彼女たちのフォロワーに広めていきました。また、サステナブルショップやSDGsを取り入れているセレクトショップでお買い物をする方々に商品を無料で配布した結果、ユーザーコミュニティが立ち上がり、口コミが広がっていきました。

― 商品のパッケージ・デザインで意識していらっしゃるポイントは何でしょうか?

イノセクトのパッケージでは、お客様が手に取りやすく生活に馴染むような、シンプルなデザインを心がけています。傾向として、昆虫食を扱う企業では、食品なのに昆虫をそのまま描いたデザインが多いんですよね。お客様に話を伺うと「コオロギを栄養価の高いサステナブルな食品として認識しているので、リアルな昆虫の姿を見なくてもいい」と。また、パッケージの素材には植物などの再生可能な有機資源(バイオマスプラスチック)を使用しています。大手量販店さんと卸売りが決まった時「INNOCECTは中も外もサステナブルだね」とご評価いただいており、やはり時代は「サステナブルな行動」が当たり前の世の中になってきているのかもしれません。

― 長田さんが起業家として大事にしていらっしゃるお考えをお聞かせください。

成功するまで失敗してもやめないことです。事業の性質上すぐに成功するとは思わないので、胆力を持ってやり続けることが重要だと考えています。今後、昆虫食は認知度や話題性が高まって人気になると予想していますが、ブームが去って再び下火になるとも予想しています。しかし、上手くいかない時期を経て20年、30年という長い年月をかけながら、人類に食の新たな選択肢を増やすという弊社のビジョンを実現したいです。

「買った商品の環境へのインパクト」を可視化。人も世界も得をする社会を作りたい

― 現在、御社には何名のメンバーがいらっしゃいますか?

現在、10名のメンバーがいます。まだ小規模ではありますが、私が商社にいた時から付き合いのあるメンバーや、各業界で実務経験を積んできたメンバーをはじめ、リファラルなどさまざまなご縁で仲間が集まっています。事業拡大に伴い、採用を積極的に進めたいとは思いますが、猫の手を借りたいほどに行き詰まっても、採用条件は変えていません。例えば、ご経歴やスキルがあってもサステナブルな世の中にしていく志を持っていない方やサステナブルな事業へ関心がない方は、弊社では厳しい。「1年に何名採用する」といったノルマを持たず、弊社のビジョンやミッション、バリューに共感いただいた方のみを採用しています。

今後は事業拡大に向けて全職種を採用をしていく予定です。特に、量産化するフェーズに入るので、コオロギの養殖業務やサプライチェーンの管理ができる方、商品開発者、マーケターを募集しています。また、大きなファイナンスをしていく上でCFOやCXOなど幹部メンバーも集めていこうと考えています。

― 今後の事業の挑戦や、サステナビリティへ貢献するための計画などを教えてください。

直近では、イノセクトの商品のバリエーションを増やしていこうと計画しています。また、コオロギの養殖を量産化し、ODD FUTUREから世界にコオロギタンパクを供給するグローバルなサプライチェーンを構築していきます。サステナブルな商品に溢れる世の中の実現に向け、コオロギ以外のサステナブルな食品を作ったり、消費財ごとにカーボンフットプリント(商品・サービスの原材料の調達から生産、流通を経て、廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクルを通じて排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算したもの)を計測するサービスを立ち上げたりしたいですね。現在、弊社の商品にはプロテイン、プロテインバー、コーヒー、クリケットパウダーがありますが、コオロギの粉末はパンの生地に練り込んで食べることもできますし、コオロギを使用した完全栄養食品はまだ沢山の可能性を秘めています。

また、養殖したコオロギの原料をもとに、人に向けた昆虫食だけでなくペットフードや養殖業のエサなど用途を広げていきます。さらに、これまではコオロギの原料を加工する段階で生じたオイルを破棄していましたが、オメガ3脂肪酸などの栄養素が豊富に含まれているので、ヘアオイルやフェイスパックなど食品以外の領域にも挑戦したいと考えています。

― ESGの観点から、経営のあり方や取り組んでいる活動についてお聞かせください。

環境については、扱っている商材がサステナブルなものなので、私たちの商品が売れれば売れるほど世の中が良くなっていく、売り上げが2倍になったら世の中も2倍良くなっていくと自信を持って言えます。社会との関わり方では、サプライチェーンまで遡っても環境負荷を抑えた方法でものづくりを行っています。また、ガバナンスに関しては、ステークホルダーに対して利益を還元することは当然ですが、関わる方が全員幸せになるような取引に注力しています。商社に勤めていた頃は仕入先とヒートアップしながら交渉したり、過度に相手から安く仕入れて高く売ったりするスタイルに馴染めませんでしたね、会社として利益を出すことは大事ですけれど。そんな背景から、弊社では仕入れ先の方々とともに成長していける関係性づくりにこだわっています。

― 今後の取り組みとして、サステナブル消費度合いを可視化し、利益の還元だけでなく社会貢献という観点からもインパクトを図っていきたいとのこと。そのインパクトをどのように評価していこうとお考えですか?

お客様がコオロギを介してサステナブルな消費をした時、「いいことをした」と満足するだけでなく、金銭的にも得をするような仕組みを作っています。例えば、中国やマレーシアの銀行ではサステナブルな行動が与信に関わってくる仕組みがあり、ユーザーが金利で優遇されたりインセンティブが与えられたりしています。今まではサステナブルな消費をしても目に見える「得」をしなかったので普及しませんでしたが、「金銭的にもエコなことをやった方がいいよね」という新たな概念が誕生したら一気に社会が変わると想像しています。

現在、私たちが提供予定のサービスでは「買った商品の環境へのインパクト」を可視化することを予定しています。Web3の仮想通貨的な発想ですが、商品を購入するとトークンが発行され、先にエコな暮らしを始めた方がより多くポイントを獲得し、信頼も上がって得をする仕組みのプロトタイプを計画しています。人も世界も得をする社会を作り、人類にサステナブルな新しい食の選択肢を一つ増やすことを必ず成し遂げたいと思っています。

(執筆:佐野 桃木 写真:taisho 編集:Onlab事務局)

投稿コオロギを通じて人も地球も健康にしたい。人類にサステナブルな新しい食の選択肢を増やすODD FUTURE |Meet with ESG Startups vol.2Open Network Lab (オープンネットワークラボ)の最初に登場しました。